美しいもの
車中で見た美しいもの。母と娘の姿。そうでありたかった私の姿。
肩の下まで美しく伸びた黒髪の少女。
耳の上から丁寧に結われた細い三つ編みが二つ。
ピンクのかわいらしいゴムで留められている。
ぴったりと母の腰に身を寄せて、全身をゆだねもたれている。
母は、つり革につかまり、車窓の風景を眺めながら、
他方の腕を子の体に回し、頬をなでる。
世界から身を守るかのように母の影に隠れる娘と、
無条件の愛と庇護を与える母親。
辛くて、思わず涙がこぼれそうになって、
目を、そらした。
私が必要とし、求め続け、でも決して得ることのできなかった、
この世界のperfection, beauty, goodness.
辛い。涙が止まらない。